2026年に施行予定 の日本の「選択的離婚後共同親権制度」と現時点での諸外国の共同親権・共同養育制度を比較し、その違いを考察します。この論考では、各制度の背景や運用、子どもへの影響についても述べます。
日本の共同親権制度の背景と特徴
日本では長らく離婚後の単独親権が標準でしたが、近年、両親と子どもの関係維持が子どもの成長に重要であるとの認識が強まり、選択的共同親権制度の導入が決まりました。この制度では、離婚後も共同親権または単独親権を選択できるようになります。
離婚協議において両親が同意すれば共同親権が認められますが、DVや虐待などのリスクがある場合や、親同士の対立が解消できない場合には単独親権が選択される点が特徴です。
具体的には、教育方針や住居の変更など重要な事項については両親の合意が必要とされ、法施行までに具体的なガイドラインが制定される見通しです。このため、日本の新制度は単に法的な権利の分配ではなく、両親が協力しやすい枠組みを構築する方向性を目指しているといえます。しかし、具体的な運用が確立していないため、実際の養育現場での課題も多く残されています。
諸外国における共同親権・共同養育の現状
他国、特に欧米諸国ではすでに共同親権制度が広く浸透しており、離婚後も子どもが両親と安定した関係を築けるよう配慮されています。
例えば、アメリカや多くのヨーロッパ諸国では、両親間の合意が得られない場合には裁判所が具体的な養育分担を細かく定めることが一般的です。また、DVや虐待がある場合には共同親権が認められないなど、子どもの安全を最優先にした基準が明確です。
さらに、これらの国々では、共同親権の維持のために定期的な養育相談や教育プログラムが提供されるなど、親同士の合意を支援するための仕組みが整っています。
このように、諸外国の共同親権制度は、親の協力と子どもの福祉を促進するための体制がより充実していると言えます。
日本の制度の課題と今後の展望
日本の新制度は選択肢を拡充する一方、実際に運用が始まると複数の課題に直面する可能性があります。
まず、重要事項の決定に両親の同意が必要な場合、対立が解決できないケースでは子どもが不安定な環境にさらされるリスクがあります。また、現場におけるガイドラインの運用が不十分であれば、学校や医療機関への負担が増える懸念も指摘されています。
さらに、共同親権制度は「真意を確認する」仕組みや家庭裁判所の介入が求められる場面が増えるため、従来の単独親権制度よりも複雑さが増す可能性があります。
この点において、日本の制度は共同養育の概念を取り入れつつも、欧米の成熟した制度にはまだ及ばない段階にあります。しかし、長期的には運用に伴う修正が施され、親同士の協力体制が強化されることが期待されます。
子どもの福祉を中心とした制度の必要性
日本の選択的共同親権制度は、家族の多様な形態を法的に認める一歩と言えますが、現実には運用面での柔軟性と子どもの福祉に対する配慮が欠かせません。特に、離婚後の親同士の対立が子どもに悪影響を及ぼす可能性があるため、両親が協力できる体制やサポートが求められます。他国の例が示すように、法的な枠組みだけでなく、親同士の円滑な意思疎通を支えるためのプログラムやカウンセリングなど、支援策が必要でしょう。
今後、日本でも施行後の実務的な運用を見直し、子どもにとって最も適した親権制度が定着することが期待されます。