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連れ去られた他方の親へ与える影響について

  • 執筆者の写真: NPO団体 エヴァブレイク
    NPO団体 エヴァブレイク
  • 2024年10月31日
  • 読了時間: 7分
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親子の断絶や連れ去りが社会問題として深刻化する中、被害を受けるのは子どもだけではありません。連れ去られた他方の親にとっても、その影響は計り知れず、心身に大きな負担を及ぼします。


親としての役割を突然奪われること、そして子どもとの絆が一方的に断ち切られるという状況が、彼らにどのような心理的、社会的な影響をもたらすのか。その現実を正面から見据え、考察してみたいと思います。


突然の断絶が親の心に与える影響


親子の関係が突然断たれるという経験は、連れ去られた親に深刻な精神的影響を与えます。


通常、親としての日常的な役割がある限り、自己の存在意義や生活の意味が確かに感じられますが、その役割が強制的に取り上げられると、深い無力感や喪失感に襲われます。


国際的な研究では、親子断絶の後に連れ去られた親が経験する心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病、さらには自己評価の低下といった精神的影響が報告されています。


米国で行われたある研究によると、連れ去りを経験した親の約70%が、PTSDの症状を示しているとの結果が得られました。また、精神的な不安や孤立感が生活全般に影響を及ぼし、日常生活がままならない状態に陥るケースも少なくありません。


親としての役割が絶たれ、しかもそれが一方的な手段によって行われることは、当事者の心を深く傷つけます。特に親としての日々の行為、例えば学校の送り迎えや食事の準備、宿題のサポートなどが突然途絶えると、日常のリズムが一気に失われることになります。


このような状態が続くことで、自己の存在価値を見失い、自分が無力であると感じるようになります。親であることの意味が失われるとともに、生活の基盤そのものが崩れるのです。



社会的孤立と自己評価の低下


連れ去りが他方の親に与える影響は、社会的な面でも深刻です。


親としての役割を果たせないという状況が、他者との交流や社会的な関係にも影響を及ぼし、孤立感を深めます。


連れ去られた親が「親である自分」というアイデンティティを一方的に奪われると、自分が社会的にどのように位置づけられているのかがわからなくなり、自己評価が低下します。


また、日本では親子断絶問題に対する理解が十分に進んでいないことも、社会的な孤立を助長しています。連れ去られた親が自らの状況を周囲に理解してもらえないことは、孤立感を増幅させ、さらには自身の正当性や役割に疑問を抱かせる要因となります。


特に親権を失うことや、子どもと会う権利が制限される状況に置かれると、自分が無力で無価値だと感じることが多くなります。こうした影響は、精神的な健康を損なうばかりでなく、社会生活や仕事にまで影響を及ぼすことがあるのです。



法的および制度的なジレンマ


日本における共同親権制度が進んでいない現状は、連れ去りが他方の親に与える影響をさらに深刻なものにしています。


日本の離婚制度では、片方の親が一方的に親権を持つことが一般的であり、子どもと会う機会が制限されがちです。このため、連れ去られた親は法的な支援が乏しく、自分の権利を主張することが難しい状況に置かれます。


欧米諸国では共同親権が一般的であり、両親が子どもと関わり続ける権利を有していますが、日本ではまだその実現が難しい状況です。


このような法的なジレンマが、連れ去られた親にとっての心の負担を増幅させています。連れ去られた親が自らの権利を守るために必要な法的手段が限られていることが、連れ去り後の親子関係の回復を阻む大きな要因となっています。



生活への影響と経済的負担


連れ去りが他方の親に与える影響は、精神面だけでなく、生活全般にも広がります。親子の断絶により生活のリズムが崩れ、精神的な負担が増大することで、仕事や日常の活動にも支障をきたします。


また、子どもと会うための交通費や弁護士費用など、経済的な負担も少なくありません。さらに、裁判や面会のために多大な時間とエネルギーを費やさなければならないため、経済的にも精神的にも疲弊していきます。


実際、連れ去られた親の多くが裁判所を通じて面会権を求めていますが、そのための費用は決して安くありません。さらに、法的なプロセスが長期化することが多く、その間にも経済的な負担が増していきます。


このような状況が続くことで、連れ去られた親は次第に疲れ果て、自分の権利を主張する気力を失ってしまうこともあるのです。



心身への長期的影響と健康リスク


連れ去りが他方の親に与える影響は短期間にとどまらず、長期的な心身の健康にも重大な影響を及ぼします。連れ去られた親は、絶え間ない不安やストレス、うつ状態に苦しむことが多く、これらが健康リスクを高める要因となります。


特に、慢性的なストレスは心臓疾患や免疫力の低下、さらには睡眠障害を引き起こし、健康を損なうことが研究でも指摘されています。


ある研究によれば、親子断絶を経験した親は、高血圧や心臓病などの健康問題を抱えるリスクが高まることが示されています。


また、ストレスが慢性化すると、認知機能の低下や情緒不安定など、生活の質全般に影響が及ぶことが分かっています。このような健康リスクは、ただでさえ精神的に傷ついている状況下で、さらに重荷となるのです。



感情的な影響とアイデンティティの喪失


連れ去られた親が経験するもう一つの大きな影響は、アイデンティティの喪失感です。「親としての役割」が突然奪われることにより、これまで築き上げてきた自己イメージや生活の基盤が崩れることになります。自分が親としての存在意義を見失うと同時に、自分の価値や社会的な役割についても疑問を抱くようになります。この影響は深く、回復には時間がかかる場合が多いです。


さらに、子どもと一緒に過ごす機会がなくなることで、親子関係が持つ本来の喜びや感動を経験できなくなり、自己充足感や幸福感を失うことにもつながります。


こうした感情的な影響は、他者との関係にも影響を及ぼし、孤立感を深める一因となります。家族や友人、同僚との関係がうまくいかなくなることで、ますます孤立し、心の傷が癒えることが難しくなるのです。



再生への道と社会的サポートの重要性


このように連れ去られた他方の親に与える影響は甚大であり、心身両面にわたる長期的な負担となります。


しかしながら、こうした親たちが再生するためには、社会的なサポートと理解が欠かせません。日本の共同親権制度の導入が進むことで、親子断絶のリスクを減らし、他方の親が子どもと関わり続けるための環境が整備されることが望まれます。


また、心理的なケアも重要です。親子断絶を経験した親が心の傷を癒し、再び自分の人生を取り戻すためには、カウンセリングやサポートグループの存在が大きな助けとなります。連れ去りによって傷ついた心を少しずつ癒し、再び自分のアイデンティティを再構築するためには、周囲の理解と支えが不可欠です。


欧米では、親子断絶を経験した親のためのサポートプログラムが充実しており、カウンセリングやサポートグループを通じて再生を支援する体制が整っています。日本でも、このような取り組みが今後広がり、連れ去りを経験した親が孤立せず、再び社会とのつながりを取り戻せるような環境が求められます。



まとめ


連れ去られた他方の親に与える影響は、単に子どもと会えないことにとどまらず、心身の健康、社会的なアイデンティティ、経済的負担など、多岐にわたります。


親としての役割を突然奪われることで、深い喪失感や無力感に苛まれる彼らが再生への道を歩むためには、法的な整備と共に、社会的なサポートと理解が必要です。


親子断絶が親に与える影響を真摯に考え、社会全体で支えるための体制が整うことこそが、親子関係の持続と双方の幸福につながるのです。

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